名寄せは「重複削除」と違い、完全一致しない文字列から同一候補を探す作業です。自動確定より、正規化→候補生成→人確認の3段階に分ける方が安全です。
この記事では、会社名を比較用に正規化して重複候補を出し、統合するかどうかは人が判断する手順を整理します。対象は、「株式会社」「(株)」「㈱」や全角・半角の違いで、同じ取引先が別々に登録されてしまうケースです。
先に結論
- 原文は消さず、比較用の「正規化列」を別に作る。
- 何を同じとみなすか(正規化のルール)を先に決めて書き出す。
- 正規化後に一致したものはあくまで「候補」。名称が似ているだけで自動統合しない。
手順
- 会社名の原文を残したまま、比較用の正規化列を追加する。
- 株式会社/(株)/㈱、全角半角、余分な空白、英数字表記など、許可した変換だけを正規化する。
- 正規化後に完全一致するものを名寄せ候補として出す。
- 住所・電話番号・法人番号など補助キーがある場合は一致理由を追加する。
- 自動で1件に潰さず、候補理由を見て人が統合可否を決める。
実務での確認チェック
- [ ] 原文を消していない
- [ ] 正規化規則が再現可能
- [ ] 似ているだけで自動統合していない
- [ ] 統合理由を記録している
Excelで正規化列を作る例
A列に会社名の原文が入っているとします。B列(正規化名)に次の式を入れ、最終行までコピーします。
=TRIM(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(ASC(A2),"株式会社",""),"(株)",""),"㈱",""))
ASCで全角の英数字・記号・スペースを半角にそろえます。全角の「(株)」は半角の「(株)」になるので、次の置換で取り除けます。カタカナも半角になりますが、比較用の列なので問題ありません。SUBSTITUTEで法人格の表記を取り除きます。「有限会社」「(有)」「合同会社」など、扱う法人格があれば同じ形で追加します。TRIMで前後の空白を取り除き、連続した空白を1つにまとめます。
C列(候補件数)には、同じ正規化名が何件あるかを数える式を入れます。
=COUNTIF($B$2:$B$1000,B2)
2以上の行が名寄せ候補です。B列で並べ替えると、候補同士が隣に並んで確認しやすくなります。
具体例
「株式会社青空商事」と「(株)青空商事」は、正規化するとどちらも「青空商事」になるため、名寄せ候補として並びます。さらに電話番号が一致すれば下の表の「強い候補」、住所の主要部分が一致すれば「中候補」になります。一方、「青空商事」と「青空商事物流」は正規化しても一致せず、名前が似ているだけなので別法人の可能性があります。
また、法人格を取り除くと「株式会社青空商事」(前株)と「青空商事株式会社」(後株)も同じ正規化名になります。前株と後株は別法人のことがあるため、法人格の位置が違う組み合わせは、住所や法人番号で確認するまで統合しません。
よくある失敗
- 正規化した値で原文を上書きしてしまい、元の表記に戻せなくなる。
- 空白をすべて削除するルールにして、本来は別の名称まで一致させてしまう。
- 正規化名が一致しただけで統合し、支店や関連会社など別法人のデータを混ぜてしまう。
名寄せ候補の強さを3段階で分ける
| 判定 | 例 | 自動統合 |
|---|---|---|
| 強い候補 | 法人番号が一致、または正規化名+電話番号が一致 | それでも原文を残して確認 |
| 中候補 | 正規化名+住所の主要部分が一致 | 自動統合しない |
| 弱い候補 | 名称が似ているだけ | 必ず人確認 |
どの段階でも、名称が似ているだけで自動統合しないことを固定ルールにします。
名寄せログに残す項目
- 元の名称
- 正規化後名称
- 一致した補助キー
- 候補強度
- 統合した/しなかった理由
このページでは扱わないこと
すべての列が完全に同じ行を削除する作業は扱いません。完全一致の削除は推測を含まないため、名寄せとは手順を分けます。
次に確認するページ
- 完全に同じ行だけを削除したい:Excel・CSVで完全一致の重複だけ安全に削除する方法
参考
- 国税庁 法人番号公表サイト(法人番号から商号・所在地を確認する場合)
- Microsoft: ASC 関数 / SUBSTITUTE 関数 / TRIM 関数
確認日: 2026-09-28
