面識のない相手からの依頼メールを読むとき、相手は「誰からか」「なぜ自分にか」「何を頼まれているか」「引き受けなくても問題ないか」を判断しています。このどれかが欠けると、返信が遅れたり、一斉送信の営業メールと見分けがつかずに後回しにされたりします。

ここでは、初めての相手への依頼を1通で伝えるための要素と書く順番、場面別の例文、送る前の確認項目をまとめます。

1通に入れる5つの要素

要素 書くこと 欠けると起きること
名乗り 会社名・部署・氏名、何をしている者か 誰からのメールか分からず、警戒される
連絡した経緯 どこで相手を知ったか、なぜこの相手に頼みたいか 一斉送信の営業メールと区別されない
依頼内容と条件 何を、どのくらい、いつ頃、予算、進め方 引き受けられるか判断できず、質問の往復が増える
返答期限 いつまでに何を返してほしいか 返信が後回しになる
断りやすさ 難しい場合はその旨だけでよいこと 断りにくくなり、返信そのものが来ない

既存の取引先への依頼と比べると、「名乗り」「経緯」「断りやすさ」が初回ならではの部分です。

基本の型

次の順番で書くと、相手は上から読むだけで判断できます。

件名:【ご相談】〇〇のご依頼について(株式会社△△ 山田)

〇〇株式会社
〇〇様

突然のご連絡失礼いたします。
株式会社△△で〇〇を担当しております、山田と申します。
弊社は〇〇を行っている会社です。(自社の説明は1文)

〇〇様のWebサイトで〇〇の事例を拝見し、ご連絡いたしました。
(なぜこの相手に頼みたいかを1〜2文)

〇〇について、ご依頼が可能かご相談させてください。

■ご依頼したい内容
・内容:
・数量/規模:
・希望時期:
・予算:
・進め方:

■ご回答のお願い
〇月〇日(〇)までに、お引き受けいただけるかどうかをお知らせいただけますと幸いです。
日程やご予算の面で難しい場合は、その旨だけお知らせいただければ十分です。

ご多忙のところ恐縮ですが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

(署名)

各要素の書き方

名乗り:相手が確かめられる情報を出す

初めての相手は、送り主が実在するかを気にします。会社名と氏名に加え、署名に会社のWebサイトや電話番号を入れておくと、相手が確かめられます。個人事業の場合は、屋号と「何をしているか」を1文で添えます。

自社の説明は1文で十分です。会社紹介が長いと、依頼内容にたどり着く前に読む気が落ちます。

連絡した経緯:何を見て、なぜ頼みたいかを書く

「Webサイトを拝見し」だけでは、多くの相手に送っている文面と区別がつきません。何を見て、なぜこの相手に頼みたいと思ったかを具体的に1つ書きます。

  • 「〇〇の制作事例を拝見し、今回作りたいものに近い内容を手がけていらっしゃると思い」
  • 「〇〇についてのご著書を拝読し、社内の〇〇の課題に合うと考え」

紹介で連絡する場合は、紹介者の名前を書くと伝わりやすくなります。ただし、名前を出してよいかは事前に紹介者に確認しておきます。

過度な褒め言葉や「〇〇様にしかお願いできません」のような表現は、相手を断りにくくさせるので控えます。

依頼内容:決まっていることと未定のことを分ける

初回の時点で、全部が決まっていないことはよくあります。未定の項目は、未定だと分かるように書きます。

  • 「予算:お見積もりをいただいたうえで検討したいと考えています」
  • 「時期:〇月中を希望していますが、調整は可能です」

社外秘の情報、顧客名、詳しい資料は初回のメールに入れません。引き受けの検討が進んでから、必要に応じて秘密保持の取り決めを交わして共有します。

添付ファイルも、初回は避けるか最小限にします。知らない相手からの添付は、開くのをためらわれることがあります。

返答期限:何を返してほしいかとセットで書く

「〇月〇日までにご返信ください」だけでは、何を返せばよいか分かりません。可否だけか、見積もりか、打ち合わせの候補日かを書きます。

初回は「引き受けられるかどうか」だけを期限付きで聞き、詳細は次のやり取りに回すと、相手の負担が小さくなります。

仕事の希望時期(納期)と返答の期限は、別の日付です。両方を書くときは見出しを分けて、混同されないようにします。日付には曜日を付け、カレンダーと照らし合わせます。

断りやすさ:一文で逃げ道を作る

断ってよいと明記すると、相手は気軽に返信できます。

  • 「ご都合が合わない場合は、その旨だけお知らせいただければ幸いです。」
  • 「お断りいただく場合も、理由のご説明は不要です。」
  • 「〇月〇日までにご返信がない場合は、今回は見送りと理解いたします。」

3つ目の書き方は相手の負担を減らせます。その代わり、メールが届いていないのか、見送られたのかの区別がつかなくなります。可否を確実に知りたい場合は使いません。

例文

例1:Webサイトを見て制作を依頼する

件名:【ご相談】会社案内パンフレットのデザイン制作について(株式会社△△ 山田)

デザイン事務所〇〇
〇〇様

突然のご連絡失礼いたします。
株式会社△△で総務を担当しております、山田と申します。
弊社は〇〇市で業務用機器の販売を行っている会社です。

〇〇様のWebサイトで、製造業の会社案内パンフレットの制作事例を拝見しました。
専門的な内容を図で分かりやすく整理されている点が、今回作りたいものに近いと感じ、ご連絡いたしました。

弊社の会社案内パンフレットのデザインをご依頼できないか、ご相談させてください。

■ご依頼したい内容
・内容:会社案内パンフレットのデザイン(A4・8ページ程度)
・原稿:文章と写真は弊社で用意します
・希望時期:〇月中旬の完成を希望しています(多少の調整は可能です)
・予算:お見積もりをいただいたうえで検討したいと考えています
・進め方:オンラインでの打ち合わせを想定しています

■ご回答のお願い
〇月〇日(〇)までに、お引き受けいただけるかどうかをお知らせいただけますでしょうか。
お引き受けいただける場合は、お見積もりに必要な情報もあわせてお知らせいただけますと助かります。
時期やご予算の面で難しい場合は、その旨だけお知らせいただければ十分です。

ご多忙のところ恐縮ですが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。

――――――――――
株式会社△△ 総務部
山田 〇〇
電話:00-0000-0000
メール:〇〇@〇〇
Web:(会社サイトのURL)
――――――――――

例2:知人の紹介で専門家に相談する

件名:〇〇様のご紹介でご連絡しました/社内研修の講師のご相談(株式会社△△ 佐藤)

〇〇様

突然のご連絡失礼いたします。
株式会社△△で人事を担当しております、佐藤と申します。
〇〇株式会社の〇〇様より〇〇様をご紹介いただき、ご連絡いたしました。

〇〇様から、〇〇の分野で社内研修の講師をされていると伺いました。
弊社では来期に向けて、〇〇をテーマにした新任管理職向けの研修を検討しており、講師をお願いできないかご相談させてください。

■ご相談したい内容
・内容:新任管理職向け研修の講師(〇〇をテーマに2時間程度)
・対象:新任管理職 約〇名
・時期:〇月から〇月の間で、ご都合に合わせて調整したいと考えています
・形式:弊社会議室での対面を想定していますが、オンラインも検討できます
・謝礼:ご提示いただいた条件をもとに、社内で検討いたします

■ご回答のお願い
〇月〇日(〇)までに、ご検討いただける可能性があるかどうかだけでもお知らせいただけますと幸いです。
お忙しい時期などで難しい場合は、ご遠慮なくお断りください。理由のご説明は不要です。

ご検討のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

(署名)

例3:問い合わせフォームから送る短い版

問い合わせフォームは、文字数に制限があったり、見出しや箇条書きが崩れたりすることがあります。要点だけを送り、詳しい内容は返信をもらってからメールで送ります。相手のサイトに依頼の受付方法が書かれている場合は、その方法に従います。

株式会社△△の山田と申します。
貴社Webサイトで〇〇の事例を拝見し、ご連絡しました。

弊社の〇〇の制作(〇月中の完成を希望)をご依頼できないかご相談したく、お引き受けが可能かどうか伺えますでしょうか。
可能な場合は、詳しい内容をあらためてメールでお送りいたします。

〇月〇日(〇)までにご返信いただけますと幸いです。難しい場合は、その旨だけで結構です。

連絡先:〇〇@〇〇(電話:00-0000-0000)

送る前のチェックリスト

  • 相手の会社名・氏名を公式サイトなどで確認し、正しく書いている
  • 送り先が、相手の指定する依頼・問い合わせの窓口になっている
  • 冒頭3行以内に、自分が誰かが書いてある
  • 連絡した経緯が具体的に書いてある(どこで知り、なぜこの相手か)
  • 紹介者の名前を出す場合、本人の了承を得ている
  • 依頼内容の数字(数量・日付・予算)に誤りがない
  • 未定の項目が、未定だと分かるように書いてある
  • 返答期限と、返してほしい内容(可否・見積もり・候補日など)が書いてある
  • 日付と曜日が合っている
  • 断ってもよいことが書いてある
  • 社外秘の情報、顧客名、個人情報を入れていない
  • 添付ファイルがない、または最小限になっている
  • 署名に、相手が確かめられる連絡先が入っている

返信が来たら・来なかったら

  • 引き受けてもらえた場合:お礼を伝え、次の段取り(詳しい資料の送付、打ち合わせの候補日など)を示します。
  • 断られた場合:時間を割いてもらったことへのお礼を短く返します。理由を尋ねたり、何度も頼み直したりはしません。
  • 期限を過ぎても返信がない場合:メールが届いていない、または迷惑メールに分類された可能性があります。前回の送信日を添えて一度だけ送り直し、それでも返信がなければ見送ります。
おすすめの記事