手順書は、内容が正しくても見た目が読みにくいと、作業中に読み飛ばされたり、どこまで進んだか分からなくなったりします。作業する人は、画面と手順書を行き来しながら読みます。そのため、目を離して戻ってきたときに「今どこか」がすぐ分かる配置にしておく必要があります。
この記事では、手順書の見た目の型を決めます。何をどの順番で書くかという中身の作り方ではなく、番号・操作・画面図・注意書き・分岐をどこに置くかを扱います。
先に決めること:ExcelかWordか
どちらでも手順書は作れますが、向いている手順書が違います。迷ったら次の表で決めてください。
| 判断材料 | Excelが向く | Wordが向く |
|---|---|---|
| 手順の数 | 多い(20手順以上) | 少なめ〜中程度 |
| 1手順の文章量 | 短い(1〜2文) | 説明が長くなる |
| 画面図の数 | 少ない、または別シートにまとめる | 多い、手順の直後に置きたい |
| 入力値・設定値 | 多い(列で一覧にしたい) | 少ない |
| 使い方 | 画面の横に開いて見ながら作業 | 印刷・PDFにして読む |
| 分岐 | 少ない | 条件ごとに説明が必要 |
目安としては、データ入力や設定変更のように「どこに何を入れるか」が中心ならExcel、画面の操作を図で見せることが中心ならWordです。
Excelで画面図をたくさん貼ると、行の高さを変えたときに画像の位置がずれやすくなります。画面図が多い手順書をExcelで作ると、あとで直すときに手間がかかります。
どちらにも共通する基本の型
ExcelでもWordでも、1つの手順は次の要素で構成します。
| 要素 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| 手順番号 | 1から始まる通し番号 | 5 |
| 操作 | 動詞で終わる1つの動作 | 「保存」を押す |
| 場所 | 操作する画面・メニュー・ボタン名 | 請求書一覧画面 右上 |
| 入力値 | 入れる値・選ぶ項目 | 締め日:月末 |
| 確認 | 操作後に何が起きれば正しいか | 一覧に新しい行が追加される |
| 注意 | 間違えやすい点・やってはいけないこと | 「削除」と並んでいるので押し間違えない |
| 画面図 | 図の番号、または図そのもの | 図3 |
この型で見やすくするためのルールは次の4つです。
- 1手順に1つの操作:「開いて、選んで、保存する」は3手順に分けます。番号が細かくなっても、途中で手を止めたときに戻る位置が分かりやすくなります。
- ボタン名・メニュー名は画面の表記どおりにかぎ括弧で囲む:「保存」「OK」のように書けば、本文の説明と画面上の文字を区別できます。
- 確認の欄を空けない:操作した後に何が起きれば正しいのかが書いてあれば、作業する人がその場で誤りに気づけます。
- 注意は操作の前に置く:操作の後に「なお、〜しないでください」と書いても、読む前に操作が終わっていることがあります。
Excelで作る場合のレイアウト
列の構成
Excelでは、1手順を1行にします。次の列構成をそのまま使えます。
| A列 | B列 | C列 | D列 | E列 | F列 | G列 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| No. | 場所 | 操作 | 入力値・選択 | 確認 | 注意 | 図 |
| 1 | 販売管理 トップ画面 | 「請求」メニューを開く | ― | 請求書一覧が表示される | ― | 図1 |
| 2 | 請求書一覧 右上 | 「新規作成」を押す | ― | 入力画面が開く | 隣の「一括削除」を押さない | 図2 |
| 3 | 入力画面 取引先欄 | 取引先を選ぶ | 取引先コード | 取引先名が自動表示される | 名前ではなくコードで検索する | ― |
| 4 | 入力画面 締め日欄 | 締め日を選ぶ | 月末 | ― | ― | ― |
このレイアウトで見やすくするための設定は次のとおりです。
- 列幅は操作列(C列)を一番広くする:手順書を読む人が最初に見るのは「何をするか」です。
- 見出し行を固定する:「表示」→「ウィンドウ枠の固定」で1行目を固定すると、スクロールしても列の意味が分かります。
- 「折り返して全体を表示」をオンにする:文字が隣のセルに隠れないようにします。
- 注意列は塗りつぶしではなく文字色で目立たせる:全行に色を付けると、本当に注意が必要な行が目立たなくなります。注意がある行だけ、F列を太字にする程度にとどめます。
- セル結合は見出し以外で使わない:結合したセルがあると、並べ替えや行の挿入がうまくいかなくなります。
画面図の置き方
Excelに画面図を貼る方法は、主に3つあります。
| 置き方 | 向いている場合 | 注意点 |
|---|---|---|
| 別シート「画面図」にまとめ、G列に図番号を書く | 画面図が多い | 手順と図を行き来する手間がある |
| 手順の行の右側に貼る | 画面図が数枚 | 行の高さを変えると位置がずれやすい |
| 画像をセル内に配置する機能を使う | 図を行と一緒に並べ替えたい | Excelのバージョンによって使えない。挿入メニューの表示で確認する |
画像を右側に貼る場合は、画像を右クリックして「図の書式設定」→「プロパティ」で「セルに合わせて移動やサイズ変更をする」系の設定を選ぶと、行を挿入したときにずれにくくなります。それでも完全にはそろわないことがあるため、画面図が多い手順書は別シートにまとめるか、Wordで作るほうが管理しやすくなります。
印刷するとき
- 「ページレイアウト」→「印刷タイトル」で1行目をタイトル行に指定し、すべてのページに見出しを出す
- 「ページ設定」で横を1ページに収める(縦は自動)
- 用紙は横向きにすると、注意列まで1行で収まりやすい
Wordで作る場合のレイアウト
Wordでは、表で作る型と、番号付きの段落で作る型があります。
型1:表で作る(入力値が多い手順向け)
Excelと同じ考え方で、1手順を表の1行にします。列はExcelより減らし、3〜4列に収めると読みやすくなります。
| No. | 操作と場所 | 確認 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 1 | 販売管理のトップ画面で「請求」メニューを開く | 請求書一覧が表示される | ― |
| 2 | 請求書一覧の右上にある「新規作成」を押す | 入力画面が開く | 隣の「一括削除」を押さない |
表が複数ページにまたがる場合は、見出し行を選んで「レイアウト」タブの「タイトル行の繰り返し」をオンにすると、各ページの先頭に見出しが表示されます。
型2:番号付きの段落で作る(画面図が多い手順向け)
画面図を手順のすぐ下に置きたい場合は、表を使わずに次の並びを繰り返します。
【手順番号】操作(1文)
[注意がある場合]⚠ 注意書き
[画面図]
→ 確認:操作後に表示されるもの
具体的には次のような見た目です。
手順2 請求書一覧の右上にある「新規作成」を押します。
⚠ 隣に「一括削除」ボタンがあります。押し間違えないでください。
[図2:請求書一覧画面。「新規作成」ボタンを赤枠で囲む]
→ 入力画面が開けば次へ進みます。
Wordで画像を配置するときのポイントは次のとおりです。
- 画像の文字列の折り返しは「行内」にする:「四角形」や「前面」にすると、文章を追加したときに画像が別のページへ動くことがあります。
- 手順の見出しにスタイルを使う:手順番号の行に見出しスタイルを設定すると、ナビゲーションウィンドウから手順へ移動できます。
- 画面図の幅をそろえる:大きさがばらばらだと、どれが重要な図か分かりにくくなります。全体を見せる図と一部を拡大した図の2種類程度に決めておきます。
画面図の作り方をそろえる
画面図は、ExcelでもWordでも同じルールで作ると見やすくなります。
- 必要な範囲だけ切り取る:画面全体だと、どこを見ればよいか分かりません。操作する場所の周囲だけを切り取り、画面のどのあたりかが分かる程度の余白を残します。
- 操作する場所を1つだけ囲む:赤枠などの囲みは1枚の図に1か所が基本です。複数ある場合は、囲みの横に手順番号を書きます。
- 図の番号と手順番号を対応させる:手順5の図なら「図5」、手順5に図が2枚あるなら「図5-1」「図5-2」とします。
- 個人情報・取引先名は伏せる:テスト用のデータで撮るか、名前や金額の部分をぼかしてから貼ります。
- 画面の表示が変わりやすい場所は文字でも書く:システムの更新で画面が変わっても、ボタン名が文字で書いてあれば作業を続けられます。
注意書きの置き方
注意書きが多すぎると、作業する人は読まなくなります。種類を3つに分け、見た目を変えます。
| 種類 | 使う場面 | 見た目の例 |
|---|---|---|
| 警告 | 元に戻せない操作、データが消える操作、外部へ送信される操作 | ⚠ 太字、操作の直前に置く |
| 注意 | 間違えやすいが、やり直せる操作 | 「注意:」から始める通常の文字 |
| 補足 | 知っておくと便利な情報 | 文字を小さくする、または欄外 |
警告は手順書全体で数か所に絞ります。すべてに警告を付けると、本当に危ない操作が目立たなくなります。
分岐の置き方
「Aの場合はこちら、Bの場合はこちら」という分岐は、手順書が読みにくくなる一番の原因です。次のどれかの形に限定します。
短い分岐:手順の中に条件表を置く
分岐の先が1〜2手順で合流する場合は、その手順の中に小さな表を置きます。
手順6 支払方法を選びます。
| 取引先の契約 | 選ぶ項目 |
|---|---|
| 振込 | 「銀行振込」 |
| 口座振替 | 「口座振替」 |
| 契約書に記載がない | 担当者に確認してから進める |
長い分岐:手順番号で飛ばす
分岐の先が数手順続く場合は、「→ 手順12へ」と飛び先を書きます。飛び先の手順には「(手順6で『口座振替』を選んだ場合)」と、どこから来たかを書いておきます。
それ以上の分岐:別の手順書・別のシートに分ける
分岐の中にさらに分岐があるような場合は、1つの手順書に詰め込まず、例外処理用のシートや別の手順書に分けます。メインの手順書には「例外の場合は『例外処理』シートを参照」と1行だけ書きます。
表紙・ヘッダーに置く項目
手順書の先頭には、本文に入る前に確認したい情報をまとめておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手順書名 | 何の作業か(例:月末の請求書発行) |
| 対象の画面・システム | 使うソフトやシステムの名前 |
| 作業する人 | 担当者・役割 |
| 所要時間の目安 | 慣れた人がかかる時間 |
| 開始前に必要なもの | 必要なファイル・権限・資料 |
| 更新日 | 最後に内容を直した日 |
Excelならシートの上部に数行で、Wordなら1ページ目の冒頭かヘッダーに置きます。更新日や版の付け方のルールは、手順書を運用するルールとして別に決めておきます。
完成後の見た目チェック
作った手順書は、作った本人以外が実際に画面を操作しながら読むと、読みにくい箇所が見つかります。その際は次の項目を確認してください。
- 1つの番号に1つの操作だけが書かれている
- ボタン名・メニュー名が画面の表記と一致している
- すべての手順に「確認」が書かれている、または不要な理由がある
- 警告が操作の前に置かれ、数か所に絞られている
- 画面図の番号と手順番号が対応している
- 画面図に個人情報や取引先名が写っていない
- 分岐の飛び先の番号が正しい
- 印刷・PDFにしても見出しが各ページに出る
- 画面から目を離して戻ったとき、どの手順か見つけられる
