業務マニュアルをWord・Excel・PowerPointのどれで作るかには、決まった正解がありません。ただ、マニュアルの中身に合わないツールを選ぶと、困ることが出てきます。
- 画像がずれる
- 更新が面倒になって放置される
- 印刷すると読めない
この記事では、次の5つの観点から、どのツールが合うかを判断する基準をまとめます。
- 更新の頻度
- 手順の数と分岐
- 画面画像の量
- 読む環境
- 共同編集の有無
3つのツールの向き・不向き
| 観点 | Word | Excel | PowerPoint |
|---|---|---|---|
| 向いている内容 | 説明や判断基準が多い文章中心のマニュアル | 短い手順が多く並ぶもの、一覧で管理したいもの | 画面操作が中心で、1画面ずつ見せたいもの |
| 文章の量 | 多くても読みやすい | 長い文章はセルの中で読みにくい | 1枚に載せられる量が限られる |
| 画面画像 | 文章の流れの中に入れやすい。点数が多いと配置の調整に手間がかかる | セルの上に浮くため、行の高さを変えるとずれやすい | 画像と説明を自由に配置しやすい |
| 手順の追加・入れ替え | 段落を足すだけで済む | 行の挿入で済む | スライドを足せばよいが、枚数が増えると全体を見渡しにくい |
| 印刷 | ページ単位で整えやすい | 印刷範囲や改ページの調整が必要になりやすい | 1枚1ページで印刷しやすい |
| 目次・見出し | 見出しを設定すれば目次を作りやすい | 目次はシートやリンクで自作する | スライドの一覧はあるが、階層の深い構成には向かない |
| 弱いところ | 画像が多いと編集が重くなる | 文章や画像が多いマニュアル | 説明の文章や条件分岐が多いマニュアル |
判断に使う5つの基準
1. 更新の頻度
よく更新するマニュアルほど、更新する人が最小限の手間で直せる形を選びます。
- 月に何度も変わる:1か所の修正がほかに影響しにくい形が向く。Excelの1行1手順や、Wordの1業務1ファイルなど
- 年に数回しか変わらない:読みやすさや印刷の見やすさを優先してよい
- 画面の変更が多いシステムの操作:画像の差し替えが多いため、差し替えやすいツールを選ぶ。画像の点数そのものを減らすことも考える
更新が面倒なマニュアルは、いずれ実際の業務とずれていきます。読みやすさより更新しやすさが大事な場面は少なくありません。
2. 手順の数と分岐
- 手順が多く、1つ1つは短い:Excelの表で、1行に手順・担当・注意点を並べると管理しやすい
- 「この場合はA、そうでなければB」という分岐や、判断の理由が多い:見出しで区切って文章で説明できるWordが向く
- 手順は少ないが、画面の操作が細かい:1枚に1画面を置けるPowerPointが向く
3. 画面画像の量
手順の半分以上に画面の画像が必要なら、PowerPointが候補になります。
Excelに画像を多く貼ると、行の高さや列の幅を変えたときに位置がずれやすく、更新の手間が増えます。Wordは文章の流れの中に画像を置けますが、点数が多くなると配置の調整に時間がかかることがあります。
画像が少しだけなら、どのツールでも大きな差はありません。
4. 読む環境
誰が、どの機器で、どのように読むかを確かめます。
- パソコンの画面で読む:どのツールでもよい
- 印刷して手元に置く:ページ単位で整えやすいWordやPowerPoint。Excelは印刷範囲の設定を確かめる
- スマートフォンやタブレットで読む:横に広い表や細かい文字のスライドは読みにくくなる。PDFにした状態で実際の画面で表示を確かめる
- 読む人がOfficeを持っていない、または編集されたくない:元のファイルとは別に、PDFにして配る
5. 共同編集の有無
- 1人で作って1人で更新する:どのツールでも困らない
- 複数人が別々の業務の部分を更新する:ファイルを業務ごとに分けるか、OneDriveやSharePointなどの共有の場所に置き、同時に編集できる状態にする
- 同時に編集できるか:保存場所、契約しているプラン、使っているOfficeの種類によって変わります。自社の環境で、2人が同じファイルを開いて編集できるかを実際に試して確かめる
共同編集をするなら、ツールより先に、誰がどの部分を更新するのかを決めておくことが大切です。
状況別の選び方
| 状況 | 選びやすいツール | 理由 |
|---|---|---|
| 経理の月次処理。手順は20以上あるが、画面の画像は少ない | Excel | 1行1手順で並べ、担当や期限の列を足せる |
| 新しい業務システムの操作方法。ほぼ全手順に画面の画像がある | PowerPoint | 1枚に1画面と説明を置き、画像を差し替えやすい |
| 問い合わせの対応基準。判断の条件や例外が多い | Word | 見出しで場合を分け、理由を文章で書ける |
| 現場で印刷して使う作業の手順 | WordかPowerPoint | ページ単位で印刷の見た目を整えやすい |
| 部署全体の業務をまとめて管理したい | Excel(一覧)+各マニュアル | 一覧で担当や更新日を管理し、中身は別のファイルにする |
1つに決めず、組み合わせてもよい
すべてを1つのツールにまとめる必要はありません。よく使われるのは、次のような組み合わせです。
- Excelで業務の一覧を作り、中身はWordやPowerPointにする:一覧には業務名・担当・頻度・最終更新日・ファイルの場所を並べる
- 編集は元のファイルで、配るのはPDF:読む人の環境の違いを気にせずに済み、勝手に書き換えられることも防げる
- 長い説明はWord、画面操作の部分だけPowerPoint:同じ業務でも、内容に応じてファイルを分ける
組み合わせるときは、どれが最新のファイルかが分からなくならないよう、保存場所を1か所に決めておきます。
迷ったときの決め方
次の順に考えると、ほとんどの場合に決まります。
- 手順の半分以上に画面の画像が必要か → 必要ならPowerPoint
- 判断の条件や理由の説明が長いか → 長いならWord
- 短い手順が多く、担当や頻度などの列で管理したいか → そうならExcel
- どれにも当てはまらない → 社内で既に使われている形式、または更新する人が慣れているツールに合わせる
4の基準は軽く見られがちですが、効き目は大きいものです。更新する人が使い慣れていないツールで作ったマニュアルは、更新が止まりやすくなります。
ツールより先に決めておくこと
どのツールを選んでも、次の3つが決まっていないと、マニュアルは古くなっていきます。
- 更新の担当者:業務の担当者が直すのか、まとめ役が直すのか
- 版と最終更新日を書く場所:表紙や1行目など、開いてすぐ見える位置
- 保存場所:最新版を置く場所を1か所に決め、古い版の扱いも決める
ツールは、この3つを回しやすいものを選ぶのが基本です。読みやすさは、選んだツールの中で整えていけば十分です。
