自宅の家賃、電気代、インターネット、スマートフォン、車などを仕事と私用の両方で使っている場合、事業に必要な部分を家事按分して必要経費にすることがあります。
ここで困りやすいのが、
「何%なら正しいのか」
という問題です。
結論からいうと、家賃30%、通信費50%のような全員共通の正解割合があるわけではありません。
大切なのは、
なぜその割合にしたのかを、使用実態と記録から説明できること
です。
このページでは「おすすめ割合一覧」ではなく、
基準を決める → 測る → 計算する → 証拠を残す → 変化したら見直す
という順で整理します。
国税庁が求めているのは「明らかに区分できること」
国税庁No.2210では、家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であった部分を明らかに区分できる場合の、その区分できる金額とされています。
また、所得税基本通達45-2では、業務上必要な部分が50%以下であっても、その必要な部分を明らかに区分できる場合には、その部分を必要経費に算入して差し支えないとされています。
したがって、
- 50%未満だから自動的に不可
- 自宅家賃は30%まで
- 通信費は50%なら安全
といった固定割合で判断しません。
まず「支出ごと」に基準を決める
同じ按分率を、すべての費用へ機械的に使う必要はありません。
家賃と車では、使用実態を表しやすい基準が違います。
国税庁の帳簿資料では、家事分と事業分の区分について、使用時間・床面積などの合理的基準で按分する例が示されています。
家賃
候補になる基準は、仕事に使う床面積です。
電気代
使用時間、仕事用機器の利用状況、面積などが候補です。
通信費
使用時間・回数・用途などが候補です。
車
業務走行距離と総走行距離、または使用日数・回数などが候補です。
どの方法も、それだけで自動的に正解になるわけではありません。その支出の利用実態を合理的に表しているかを確認します。
家賃:面積を使う例
自宅全体が60㎡、仕事専用スペースが10㎡なら、
10㎡ ÷ 60㎡ = 16.67%
です。
家賃が月90,000円なら、
90,000円 × 16.67% ≒ 15,003円
が事業部分の計算例になります。
残す資料の候補は、
- 賃貸契約書
- 間取り図
- 仕事用スペースの寸法
- 専用部屋なのか共用スペースなのかというメモ
です。
リビングの一角を仕事にも私用にも使う場合、面積だけで100%仕事用と考えるのではなく、利用時間なども含めて実態を説明できるようにします。
電気代:時間だけで本当に表せるかを見る
在宅作業が1日5時間、週5日なら、単純な時間比を作ることはできます。
ただし、家全体の電気を24時間均等に使っているわけではありません。
エアコン、PC、照明、家族の利用などによって実態は違います。
そのため、
- 作業時間
- 事業用機器
- 仕事部屋
- 家族の利用状況
なども考え、「なぜこの割合なのか」を説明できる形にします。
より客観的に測れるなら、個別メーターや機器の消費量を使う方法も候補になります。
インターネット・携帯電話:店名や契約だけで割合を決めない
同じ回線を仕事と私用に使うなら、使用時間や利用実態を基準にできます。
一方、事業専用回線・事業専用SIMのように用途を分離している場合は、共用回線より説明しやすくなります。
残す資料の候補は、
- 利用明細
- 業務連絡履歴
- 作業時間
- 事業用と私用の用途メモ
です。
「フリーランスだからスマホ代50%」のように職業名だけで割合を決めません。
車:走行距離を記録すると再計算しやすい
たとえば1か月の総走行距離が1,000km、そのうち顧客訪問などの業務走行が300kmなら、
300km ÷ 1,000km = 30%
という基準を作れます。
残す候補は、
- 日付
- 行き先
- 用途
- 業務走行距離
- 総走行距離
- オドメーター
- 給油記録
です。
距離を記録できない場合、使用日数や回数など別の合理的基準を検討します。
「50%ルール」を単純化しない
所得税基本通達45-2には50%という数字が出てきます。
しかし同じ通達には、業務上必要な部分が50%以下でも、その必要な部分を明らかに区分できる場合には、その金額を必要経費へ算入して差し支えないとあります。
したがって、
「50%以下なら一切経費にできない」
とは読みません。
一方で、10%、20%なら何でもよいという意味でもありません。
重要なのは、必要な部分を明確に区分できる根拠です。
「だいたい30%」をEvidenceへ変える
家事按分の弱い状態は、
だいたい3割くらい仕事で使っている気がする
です。
強くするには、分子と分母を残します。
弱い記録
- 家賃30%
- 電気50%
- 通信費50%
後から説明しやすい記録
- 家賃:仕事部屋10㎡ ÷ 自宅60㎡ = 16.67%
- 車:業務300km ÷ 総走行1,000km = 30%
- 通信:代表期間に業務利用時間を記録し、その測定方法と期間を保存
「割合」だけでなく、
何を測って、その割合になったか
を残します。
毎日永久に測定する必要があるとは限らない
利用状況が安定している費用なら、代表期間を測定し、その基準を継続して使う設計も考えられます。
ただし、
- 引っ越した
- 仕事部屋が変わった
- 在宅時間が大幅に変わった
- 家族構成が変わった
- 車の仕事利用が増えた
- 回線を追加した
といった変化があれば比率を見直します。
「去年30%だったから永久に30%」にはしません。
Evidence Logに残す項目
このサイトでは家事按分について、次を1レコードとして残す方式にします。
- 費目
- 支払総額
- 按分基準
- その基準を選んだ理由
- 事業利用量
- 総利用量
- 事業割合
- 事業部分の金額
- 測定期間
- 残した資料
- 最終見直し日
- 比率を見直す条件
これなら翌年も、割合だけコピーするのではなく根拠から確認できます。
家事按分チェックリスト
- [ ] その費用は事業と私用の両方に関係しているか
- [ ] 事業に直接必要な部分を区分できるか
- [ ] その費用に合った按分基準を選んだか
- [ ] 分子と分母を記録したか
- [ ] 計算式を再現できるか
- [ ] 契約書・間取り・利用記録・走行記録などを残したか
- [ ] 「なんとなく○%」だけになっていないか
- [ ] 利用状況が変わったら再計算するようにしたか
まとめ
家事按分では、割合そのものより、
なぜその割合なのか
を残すことが重要です。
このサイトでは、
支出 → 基準 → 測定 → 計算 → Evidence → 定期見直し
の順で管理します。
家賃・電気・通信費・車について固定のおすすめ割合を配るのではなく、自分の利用実態を後から再計算できる記録にします。
参考一次情報
- 国税庁「No.2210 必要経費の知識」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
- 国税庁「所得税基本通達45-1・45-2」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/07/01.htm
最終確認日:2026年9月28日
※ここで示す面積・時間・距離などは按分基準の候補です。個別の割合を一律の正解として示すものではありません。
