受け取った見積もりが予算を超えている、他社の見積もりより高い。こうしたときに「もう少し安くなりませんか」とだけ送っても、相手は判断に困ります。どこまで下げればよいのか、何を変えれば下げられるのかが分からないからです。
値引きを依頼するメールでは、次の4点をそろえると、相手が社内で検討しやすくなります。
- 希望金額(または予算の上限)
- 値引きをお願いする理由
- こちらが調整できる条件(数量・納期・支払条件など)
- 回答してほしい期限
送る前に決めておくこと
| 項目 | 決めておく内容 |
|---|---|
| 対象の見積書 | 見積書番号、日付、件名 |
| 希望金額 | 合計額か特定の項目か。税抜か税込か |
| 社内で通せる上限 | 交渉の着地点。メールには書かない |
| 理由 | 予算、相見積もり、継続取引の予定など |
| 譲れる条件 | 納期を延ばせる、まとめて発注できる、支払いを早められるなど |
| 回答期限 | 社内決裁や発注の締め切りから逆算する |
| 決定の流れ | 誰が最終判断するか、値引きが決まればすぐ発注できるか |
希望金額は、根拠のない大幅な数字にしないほうが話が進みます。予算額や他社の見積もり額など、こちらが説明できる数字を基にします。また、税抜か税込かを書き分けておかないと、相手の回答と比べるときに食い違いが出ます。
譲れる条件は、送る前に社内の関係者に了承を取っておきます。たとえば、納期を延ばすと伝えたあとで現場から断られると、交渉をやり直すことになります。
なお、仕様や作業範囲そのものを変えて金額を出し直してもらう場合は、値引きの交渉ではなく再見積もりの依頼として送るほうが整理しやすくなります。
値引き依頼メールの基本の型
- 見積もりへのお礼と、対象の見積書の特定
- 検討した結果と、値引きをお願いする理由
- 希望金額
- こちらが調整できる条件
- 希望金額が難しい場合の返答の仕方
- 回答期限
5を入れておくと、相手は「全額は無理だが、ここまでなら」と返しやすくなります。
例文1:予算を超えているとき
件名:お見積り金額についてのご相談(見積書No.○○○)
株式会社○○
営業部 ○○様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日は「○○制作」のお見積書(No.○○○、○月○日付)をお送りいただき、
ありがとうございました。
社内で検討いたしましたところ、ご提案の内容には満足しております。
ただ、今回の予算が税抜○○万円となっており、
ご提示いただいた税抜○○万円とは○○万円の差がございます。
大変恐縮ですが、税抜○○万円でのご対応が可能か、
ご検討いただけないでしょうか。
当社側で調整できる点として、以下を考えております。
・納期:○月○日としていた希望日を、○月○日まで延ばすことができます
・お支払い:納品後○日以内のお支払いにも対応できます
上記のほかにも、条件次第で金額を調整いただける点があればお知らせください。
ご希望の金額が難しい場合も、対応いただける金額をご提示いただけますと幸いです。
社内決裁の都合上、○月○日(○)までにご回答いただけますと助かります。
お手数をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
予算を理由にする場合は、差額を数字で示すと、相手は値引きの幅を検討しやすくなります。
例文2:相見積もりで他社より高かったとき
件名:お見積り金額についてのご相談(見積書No.○○○)
株式会社○○
○○様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
○月○日付のお見積書(No.○○○)をお送りいただき、ありがとうございました。
今回の案件は、複数の会社様からお見積りをいただいて比較しております。
御社のご提案は○○の点を高く評価しております。
ただ、金額面では他社様のお見積りが税抜○○万円前後となっており、
社内でその差を説明するのが難しい状況です。
つきましては、税抜○○万円程度までご調整いただくことは可能でしょうか。
作業の範囲や進め方を変えることで金額を下げられる方法があれば、
あわせてご提案いただけますと幸いです。
恐れ入りますが、○月○日(○)までにご回答いただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
相見積もりを理由にするときは、次の点に気をつけます。
- 他社の社名を書かない。他社の見積書を転送したり添付したりしない
- 他社の金額を実際より低く書かない
- 比べてほしいのは金額だけか、内容も含めてかを明確にする
他社の見積もりと条件(作業範囲、保守の有無、納期など)が違う場合、総額だけを比べると話がかみ合いません。分かっている範囲で「どの条件での金額か」を添えると、相手も調整の方向を考えやすくなります。
例文3:条件を変える代わりに値引きを相談するとき
件名:発注条件の調整によるお見積り金額のご相談(見積書No.○○○)
株式会社○○
○○様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
○月○日付のお見積書(No.○○○)をありがとうございました。
ご提示いただいた単価について、以下の条件であれば
ご調整いただける余地はございますでしょうか。
・数量:今回分と次回予定分をまとめ、○個で発注する
・納期:御社のご都合に合わせ、○月中の納品で構いません
・お支払い:発注時の前払いに対応できます
いずれか一つでも対応いただける条件があれば、
その場合の金額をお知らせください。
○月○日(○)までにご回答いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
値下げだけをお願いするより、こちらも何かを譲る形のほうが、相手は社内に説明しやすくなります。ただし、提示した条件は実際に守れるものだけにします。
特定の項目だけ相談したいとき
見積もり全体ではなく、一部の項目だけを下げてほしい場合は、項目名と金額を指定します。
お見積書のうち「○○作業費」(○○万円)について、
当社で一部の作業(○○)を担当することで、
金額を抑えていただくことは可能でしょうか。
項目を特定しておくと、ほかの項目まで見直しが必要なのかどうか、相手が判断しやすくなります。
件名の例
- お見積り金額についてのご相談(見積書No.○○○)
- 【ご相談】○○案件のお見積りについて
- お見積り金額の再検討のお願い(○月○日付 No.○○○)
件名には見積書番号か案件名を入れて、どの見積もりの話かが一目で分かるようにします。「値下げ要求」のような強い言葉は避け、「ご相談」「再検討のお願い」とするのが一般的です。
書くときに避けたいこと
- 相手の価格を否定する:「高すぎる」「相場より高い」と書くと、交渉より反論の話になりやすくなります。
- 事実と違う理由を書く:予算や他社の金額を実際より低く書くと、後で発注条件が食い違い、信頼を損ねます。
- 品質や納期の維持を一方的に求める:値引き後の条件は、相手と確認したうえで決めます。
- 決まっていない発注を約束する:決裁前に「この金額なら必ず発注します」とは書きません。
- 電話で話した内容を残さない:電話で交渉した場合も、合意した内容をメールで送って残します。
送信前のチェックリスト
- 見積書番号・日付・件名を書いた
- 希望金額が税抜か税込かを明記した
- 理由は事実に基づいている
- 調整できる条件について社内の了承を得ている
- 希望金額が難しい場合の返答の仕方を書いた
- 回答期限を書いた
- 宛先・CCに不要な人(特に他社の担当者)が入っていない
回答を受け取ったら
値引きに応じてもらえた場合は、金額と条件を反映した見積書を改めて出してもらいます。発注する前に、元の見積書と比べて、金額・数量・納期・支払条件が依頼したとおりになっているかを確認します。条件付きで回答が来た場合は、その条件を社内で守れるかを確かめてから返事をします。
