『修理代だから経費』とは限りません。国税庁は、名称ではなく実質で、通常の維持管理・原状回復か、使用可能期間の延長・価値増加かを区別しています。

このページは一般的な制度確認のための整理です。個別の税務判断を自動確定するものではありません。2026年9月29日時点で国税庁の一次資料を確認しています。

先に確認すること

  1. 何を元の状態へ戻すための支出かを確認する。
  2. 支出後に使用可能期間が延びる部分があるか確認する。
  3. 資産の価値を増加させる部分があるか確認する。
  4. 維持管理部分と価値増加部分を分けられるか確認する。
  5. 判断できない場合は金額だけで決めず、工事内容・見積書・写真等を保存して確認する。

重要な制度ポイント

1. 維持管理か、価値を高める支出か

通常の維持管理や修理のための支出は必要経費になる一方、使用可能期間を延長させたり価値を高めたりする部分は資本的支出として区別されます(国税庁 タックスアンサー No.1379、No.2107)。

2. 名目ではなく実質で判定する

修繕費か資本的支出かは『修理』『改良』という名目ではなく実質で判定します(国税庁 タックスアンサー No.1379)。

3. 資本的支出は減価償却の対象

資本的支出とされた金額は、原則として減価償却の対象になります(国税庁 タックスアンサー No.2107)。

修繕費と資本的支出の具体例

区分 支出の例
修繕費になりやすいもの 汚れた壁の塗り直し、壊れた部品を同程度の部品へ交換、定期点検・定期的な部品交換、雨漏り箇所を元の状態に戻す補修
資本的支出になりやすいもの 避難階段の取付けなど物理的に付け加えた部分、用途を変えるための模様替え・改装、部品を通常より品質・性能の高いものに取り替えた場合の、通常の取替費用を超える部分

同じ「エアコン工事」でも、故障した部品を同等品に替えるなら維持管理、能力の高い機種へ入れ替えて機能を上げるなら価値増加の部分がある、というように内容で分かれます。

修繕費/資本的支出の判定フロー

国税庁 No.1379 で示されている取扱いを、確認する順番に並べると次のようになります。金額は1つの修理・改良等ごとに見ます。

  1. 少額・短い周期か

1回の修理・改良等の金額が20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行われるものか確認します。該当する場合は修繕費として処理できます。

  1. 内容が明らかか

使用可能期間の延長や価値増加が明らかな部分は資本的支出、通常の維持管理・原状回復であることが明らかな部分は修繕費です。

  1. 区分が明らかでない部分の金額基準

2で区分できない金額について、60万円未満であるか、その資産の前年12月31日時点の取得価額のおおむね10%相当額以下であれば、修繕費として処理できます。

  1. それでも区分できない場合の特例

継続して同じ方法で処理することを条件に、支出額の30%相当額と、前年12月31日時点の取得価額の10%相当額のいずれか少ない金額を修繕費、残りを資本的支出とする方法があります。

判定例:前年12月31日時点の取得価額が500万円の設備に、維持管理か改良か区分できない80万円の工事をした場合

  • 3の基準:80万円は60万円以上で、取得価額の10%(50万円)も超えるため該当しない
  • 4の特例:80万円の30%=24万円、取得価額の10%=50万円のうち少ない24万円を修繕費、残り56万円を資本的支出とする

実務で残す判定記録

修繕費/資本的支出 判定記録

項目 記入例
対象資産・前年12月31日時点の取得価額 作業用設備・500万円
工事内容(見積書・請求書の明細) 部品交換・制御装置の更新
原状回復部分の金額 判定できず
価値増加・期間延長部分の金額 判定できず
当てはめた判定フローの段階 4(特例)
処理結果 修繕費24万円/資本的支出56万円
保存資料 見積書・請求書・工事前後の写真

工事ごとにこの記録を残しておくと、翌年以降に同じ資産へ工事をしたときにも、前回どの段階で判定したかをすぐ確認できます。

注意する点

金額基準は上の判定フローの順番で使うものです。改良であることが明らかな部分は、3や4の金額基準を使って修繕費にすることはできません。

参照した国税庁一次資料

  • 国税庁 タックスアンサー No.1379: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1379.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.2107: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2107.htm
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