個人事業主がパソコン、モニター、カメラ、机、業務用機器などを買ったとき、
- その年に全額を必要経費にできるのか
- 一括償却資産にするのか
- 少額減価償却資産の特例を使えるのか
- 通常の減価償却をするのか
は、金額だけでは決まりません。
2026年は特に注意が必要です。一定の要件を満たす青色申告者の少額減価償却資産の特例について、取得価額の上限が2026年4月1日以後の取得分から「30万円未満」から「40万円未満」へ変わりました。
このページでは、10万円・20万円・30万円/40万円の境界を、1つの判断順にまとめて確認します。
まず結論:この順番で確認する
- 事業の用に供したか
- 税込経理か税抜経理かを確認する
- 使用可能期間が1年未満か
- 取得価額が10万円未満か
- 10万円以上20万円未満か
- 取得日が2026年4月1日より前か後か
- 少額減価償却資産の特例の対象になるか
- その年の特例対象資産の合計額を確認する
- 特例等を使わない場合は通常の減価償却へ進む
購入金額だけを見て、いきなり「経費」「固定資産」と決めない方が安全です。
1. まず「買った日」ではなく「事業の用に供した日」を確認する
減価償却や少額資産の処理では、購入しただけでなく、実際に業務で使い始めた時期が重要です。
たとえば12月にパソコンを買っても、業務で使い始めたのが翌年なら、その年の処理を購入日だけで決めないようにします。
まず、取得日と事業で使い始めた日を記録します。
2. 金額判定の前に「税込経理か税抜経理か」を確認する
10万円、20万円、30万円、40万円の判定に使う「取得価額」は、消費税の経理方式によって変わります。
国税庁は、取得価額の判定について、
- 税込経理なら消費税を含んだ金額
- 税抜経理なら消費税を含まない金額
- 免税事業者は税込経理
で判定すると案内しています。
たとえば本体価格100,000円、消費税10,000円なら、
- 税込経理:110,000円
- 税抜経理:100,000円
として判定することになります。
そのため、レシートや請求書の「支払総額」だけを見て機械的に10万円判定をしないようにします。
3. 使用可能期間が1年未満なら全額必要経費になる場合がある
国税庁は、使用可能期間が1年未満のものについて、その取得に要した金額の全額を、業務の用に供した年分の必要経費とする取扱いを示しています。
ここでいう使用可能期間は、単に「自分は1年で買い替える予定」という意味ではありません。
その資産の性質や業務での一般的な使用状況なども関係するため、パソコンや机のように通常1年以上使う資産について、このルートを安易に使わないようにします。
4. 取得価額が10万円未満
取得価額が10万円未満なら、原則としてその全額を業務の用に供した年分の必要経費にします。
例として、80,000円の事業専用モニターや65,000円の事業専用プリンターなどです。
ただし、取得価額の計算自体が正しいことが前提です。送料や業務の用に供するための費用など、取得価額に含まれるものがあるため、本体価格だけで判断しない場合があります。
5. 10万円以上20万円未満
この金額帯は、選択肢が1つではありません。
一定の要件のもとで、取得価額の合計額の3分の1ずつを3年間の必要経費にする一括償却資産として扱うことができます。
また、少額減価償却資産の特例の要件を満たす場合は、そちらを検討できることがあります。通常の減価償却という選択肢もあります。
したがって、「15万円だから一括償却で決まり」とはしません。
6. 2026年は3月31日と4月1日で基準が変わる
一定の要件を満たす青色申告者の少額減価償却資産の特例では、
2026年3月31日までに取得
10万円以上30万円未満
2026年4月1日以後に取得
10万円以上40万円未満
が金額面の対象範囲です。
「2026年に買った」というだけで40万円未満の基準を使ってはいけません。
35万円のパソコンなら
- 2026年3月20日取得:30万円未満ではないため、この特例の金額要件から外れる
- 2026年4月1日取得:40万円未満なので、他の要件を満たせば特例候補
となります。
7. 「40万円未満」なので40万円ちょうどは含まれない
2026年4月1日以後の基準は、40万円以下ではなく40万円未満です。
したがって取得価額40万円ちょうどの資産は、この金額要件を満たしません。
8. 40万円未満なら誰でも全額経費にできるわけではない
40万円未満というのは、2026年4月1日以後の少額減価償却資産特例についての金額要件の一つです。
国税庁は「一定の要件を満たす青色申告者」が対象としています。
したがって、35万円のPCを買ったからといって、金額だけで全額経費と自動判定しません。
9. 年300万円の上限も確認する
少額減価償却資産の特例には、その年に適用する資産の取得価額合計について300万円に達するまでという上限があります。
その年にすでに290万円分について特例を使っていて、新たに35万円の資産を取得した場合、35万円全額をそのまま特例扱いと決めないようにします。
10. 通常の減価償却へ進む場合
少額資産の処理を使わない、または使えない場合は、通常の減価償却を確認します。
その場合は、
- 資産の種類
- 法定耐用年数
- 償却方法
- 事業に使用した月数
- 取得価額
などから減価償却費を計算します。
国税庁No.2106では、定額法・定率法の計算方法が示されています。
通常の減価償却の計算方法は、買ったときの処理判断とは別のテーマなので、別ページで詳しく扱います。
金額別の早見表
| 取得価額 | 主に確認する処理 |
|---|---|
| 10万円未満 | 原則として当年の必要経費 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却 / 少額特例 / 通常償却 |
| 20万円以上30万円未満 | 少額特例の要件 / 通常償却 |
| 30万円以上40万円未満 | 2026年4月1日以後取得なら少額特例の要件 / 通常償却 |
| 40万円以上 | 通常償却等を確認 |
この表だけで最終判断せず、取得日・経理方式・青色申告等の要件・年300万円上限なども確認してください。
2026年の具体例
8万円の事業専用備品
取得価額が10万円未満なら、原則として当年の必要経費候補です。
15万円の事業専用備品
10万円以上20万円未満なので、一括償却・少額特例・通常償却を確認します。
25万円のPCを2026年3月20日に取得
30万円未満なので、一定の要件を満たせば少額特例候補です。
35万円のPCを2026年3月20日に取得
2026年3月31日以前は「30万円未満」が基準なので、この特例の金額要件を満たしません。
35万円のPCを2026年4月1日に取得
2026年4月1日以後は「40万円未満」が基準なので、他の要件を満たせば少額特例候補です。
40万円のPCを2026年4月1日に取得
「40万円未満」ではないため、この特例の金額要件を満たしません。
この判断順だけでは決められないケース
私用と事業用の両方で使う
家事按分の問題が加わります。全額を事業経費として扱わず、事業部分を合理的な基準で区分できるか確認します。
修理・改良にお金を使った
新しく資産を買ったケースとは別です。通常の維持管理や原状回復なら修繕費となる場合がありますが、使用可能期間を延長したり価値を高めたりする部分は資本的支出になる場合があります。
私用で使っていたPCを後から事業用にした
新品を事業用として買ったケースと同じに扱いません。国税庁には、非業務用資産を後から業務用に転用した場合の減価償却の計算方法が別にあります。
貸付け用の資産
一定の貸付用資産については、10万円未満・一括償却・少額特例の取扱いに制限があります。自分で事業に使う備品と同じ前提で処理しません。
購入時に残しておく記録
- 購入日
- 事業供用日
- 資産名
- 取得価額
- 税込・税抜経理の別
- 事業専用か私用兼用か
- 選択した処理方法
- 少額特例を使う場合の年間累計
- 領収書・請求書
- 固定資産台帳上の記録
まとめ
個人事業主がパソコンや備品を買ったときは、金額だけで処理を決めないことが重要です。
確認順は、
事業供用 → 税込/税抜経理 → 1年未満 → 10万円 → 20万円 → 取得日 → 30万円/40万円境界 → 青色等の適用要件 → 年300万円上限 → 通常減価償却
です。
2026年は特に、
2026年3月31日以前:30万円未満 2026年4月1日以後:40万円未満
という取得日の境界を間違えないようにしてください。
参考一次情報
- 国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2106.htm
- 国税庁「No.2107 資本的支出を行った場合の減価償却」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2107.htm
- 国税庁「No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2108.htm
最終確認日:2026年9月28日
※少額減価償却資産の特例や減価償却の取扱いは改正されることがあります。公開後も国税庁No.2100等を基準に更新します。
