担当者が休んだ日に「あの件、誰も分からない」となることがあります。原因の多くは人数の不足ではありません。誰が代わりに動くのか、どこまで動いてよいのかが決まっていないことです。この記事では、業務ごとに主担当と副担当を決める手順をまとめます。副担当が本当に対応できるかを、一覧と試しの実施で確かめるところまで扱います。

「副担当の名前を書いただけ」では止まる理由

副担当を決めたのに、いざ不在になると仕事が止まることがあります。理由はだいたい次のどれかです。

  • 副担当がその業務を一度もやったことがない
  • システムや共有フォルダの権限が副担当にない
  • 取引先や社内の関係者が、副担当がいることを知らない
  • 副担当が「どこまで自分で決めてよいか」分からず、結局主担当の復帰を待つ
  • 1人が多くの業務の副担当を兼ねていて、不在が重なると手が回らない

バックアップ体制とは、名前を割り当てることではありません。副担当が実際に業務を回せる状態を作ることです。そう考えると、決めるべき項目が見えてきます。

手順1:業務を一覧にする

最初に、担当者ごとに抱えている業務を書き出します。細かく分けすぎると一覧が育ちません。「請求書の発行」「問い合わせメールの一次対応」「月末の在庫数の報告」のように、1行で何をする仕事か分かる粒度にそろえます。

一覧には、最低限次の列を用意します。

列 書く内容
業務名 何をする仕事か
頻度・期限 毎日/毎週月曜/毎月25日まで など
止まったときの影響 誰が・いつ困るか
主担当 普段やっている人
副担当 不在時に代わる人
副担当の判断範囲 自分で決めてよいこと(手順3で記入)
手順の置き場所 手順書・メモのリンク
必要な権限 システム・フォルダ・アカウント
最後に副担当が実施した日 試しの実施の記録(手順5で記入)

手順の中身は手順書やメモに書きます。この一覧は「誰が代われるか」を見渡すための表にとどめておくと、更新が続きやすくなります。

手順2:止まったときの影響で優先順位を付ける

すべての業務に同じ重さで副担当を用意する必要はありません。次の観点で、先に手当てする業務を選びます。

  • 期限が社外とつながっている:支払い、請求、取引先への回答など、遅れると相手に迷惑がかかる
  • 頻度が高い:毎日・毎週の業務は、数日の不在でもすぐに溜まる
  • 代わりの手段がない:操作方法や関係者を、その人しか知らない

逆に、月1回で数日遅れても影響が小さい業務もあります。そうした業務は「不在時は復帰後に対応」と明記しておくだけで足りることがあります。何も決めずに放置するのと、「待つ」と決めておくのとは別物です。

手順3:主担当・副担当を割り当て、判断してよい範囲を決める

割り当てるときの注意

  • 一覧を副担当の列で並べ替え、1人に副担当が集中していないかを確認する
  • 主担当と副担当が同じ時期に休みやすい組み合わせを避ける(同じ繁忙期、同じ外出業務など)
  • 少人数で副担当を置けない業務は、上長や外部の協力先を副担当にする。それも難しければ「不在時は止める」と決め、関係者に伝えておく

判断してよい範囲を3段階で書く

副担当が止まる一番の理由は、判断の境目が分からないことです。業務ごとに次の3段階で書き分けます。

区分 例(請求書の発行)
副担当が判断して進めてよい 前月と同じ内容・同じ金額の請求書を発行する
主担当に確認してから進める 金額や品目が前月と違う、取引先から修正依頼がある
上長や責任者に上げる 支払条件の変更、値引きの相談、契約にかかわる話

金額の上限、取引先の種類、新規か継続かなど、線を引ける基準があれば具体的に書きます。「迷ったら確認」とだけ書くと、全部が確認待ちになりがちです。

手順4:不在時の連絡ルールを決める

主担当が休んでいる間に連絡してよいかどうかの感覚は、人によって違います。事前に次の点を決めておきます。

  • 不在中の主担当に連絡してよいのは、どの区分の件か(例:「上長に上げる」区分のうち、急ぎのものだけ)
  • 連絡手段と時間帯(例:チャットのみ、平日の日中のみ。休暇中は連絡しない)
  • 主担当に連絡がつかないときに、次に頼る人
  • 取引先や社内関係者への案内(不在期間、代わりの窓口、急ぎの連絡先)

急な不在に備えて、当日朝に休みの連絡を受けた人が副担当に何を伝えるかも、1行で決めておきます。例:「今日が期限の業務と、返答待ちの件を伝える」。これだけで初動が速くなります。

手順5:副担当に一度やってもらって確かめる

一覧が埋まっても、実際にやってみるまで足りないものは分かりません。主担当がいるうちに、次の順で試します。

  1. 見学:主担当がいつもどおり作業し、副担当が横で見る。手順書と違う操作があればメモする
  2. 交代して実施:副担当が手順書を見ながら作業し、主担当は口を出さずに見守る。止まった箇所を記録する
  3. 主担当なしで実施:主担当が別の作業をしている日に、副担当だけで1回こなす。終わったら主担当が結果を確認する

試しの実施では、次のような抜けがよく見つかります。

  • ログインできない、フォルダが見えない、承認ボタンが押せない
  • 手順書に書いていない「いつもの判断」がある(この取引先だけ書式が違う、など)
  • 関係者の連絡先が古い、関係者が副担当の名前を知らない

権限が足りないときは、主担当のIDやパスワードを共有して済ませないでください。副担当本人に権限を付けて解消します。誰が操作したか分からなくなるのを防ぐためです。

実施した日は、一覧の「最後に副担当が実施した日」に記録します。

手順6:体制を古くしないための見直し

体制は、作った時点から少しずつ実態とずれていきます。次のタイミングで一覧を見直します。

  • 定期:四半期や半年に1回など、日付を決めて確認する
  • 業務の手順や、使うシステムが変わったとき
  • 主担当・副担当の担当替えや、長期休暇の予定が入ったとき
  • 実際に不在があり、副担当が対応した直後(困った点を手順書と一覧に反映する)

見直しでは、「最後に副担当が実施した日」が古い業務から拾います。そのうち優先度の高いものから、もう一度試してもらうと効率的です。

最初の1週間でやること

いきなり全業務をそろえようとすると止まりやすいので、まずは次の範囲から始めます。

  • 各担当者が自分の業務を一覧に書き出す
  • 止まると社外に影響が出る業務を3〜5件選ぶ
  • 選んだ業務の副担当と判断範囲を決める
  • 不在時の連絡ルールを1枚にまとめて共有する
  • 選んだ業務のうち1件を、副担当に試してもらう

この5つが回れば、残りの業務も同じ形で少しずつ広げていけます。

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